ですから……」「そうか……。総司、よくやってくれた……
Mon Dec 11, 2023 2:31 am
ですから……」
「そうか……。総司、よくやってくれた……。鈴木君を助け、その上で伊東さんを討ち取ったそうじゃないか」
その言葉に、沖田は布団の中で拳を握った。無我夢中だったが、確かに伊東を討つことが出来たのだという実感が湧く。まだ剣を振るえることと桜司郎を救えたことへの安堵が胸を占めた。
「……そうだ、桜司郎さんはへ…………」
「彼なら心配要らん。怪我もなく、別室で休んでいるよ」 頭瘡脫髮成因
「そうですか…………。良かった……」
ホッとしたように息を吐いた沖田を見た近藤は、複雑そうに眉を寄せる。いくら病へ冒されようとも、天然理心流を沖田へ継がせたいという気持ちは変わらなかった。だが、既に血を吐いていることから長くはないことも知っている。故に早く所帯を持たせたいという気持ちは未だにあった。
しかし、沖田が桜司郎へ寄せる関心は、男が女を可愛がり守りたいと思うそれと似ているようにも思えていた。同じように、桜司郎が甲斐甲斐しく沖田の世話をしているのも、妻が夫へ尽くす姿にも見えるのだ。
師弟関係という言葉では表せぬほどの絆が二人の間にはある。そのように近藤は察し始めていた。
──俺としたことが。このような時に下世話な想像など良くない。
「と、とにかく、は気にせずに休んでくれ」
それを聞いた沖田は僅かに目を細めた。伊東の暗殺の次は、御陵衛士の掃討だと聞いたことを思い出す。
そして瞼の裏へ、伊東へ着いていくことを『こうなる運命だった』と言った男を浮かべた。
立ち上がろうと片膝を立てた近藤を見上げる。
「…………平助は?平助は、どうなりますか……」
その名を出せば、近藤はぴたりと動きを止めた。
「……手向かい致せば斬らざるを得まいよ。…………しかし、大丈夫だ。総司が危惧することにはならないだろう。何たって、永倉君と原田君の持ち場だ」
「……そうか、あの二人が…………。ふふ……、近藤先生、有難うございます」
局長の立場としては御陵衛士へ肩入れすることは出来ないが、近藤勇としては平助を逃がしてやりたいのだろう。その気持ちを汲んでは沖田ははにかむ。
山口のように隊へ復帰することは叶わずとも、どこかで生きていてくれればそれで良いのだ。生きていればいつかは会えるのだから──
そう思いつつ、隣の部屋へ入っていく近藤の背を見送りながら、重くなる瞼を閉じた。 一方で、伊東の死体は七条油小路の辻へと運ばれ、晒される。大して時も経たずに奉行所へと報告され、そこから月真院へと訃報がもたらされた。
御陵衛士の面々はそれを嘆き、怒り、慟哭する。刀を手に取り、駕籠を用意させて伊東を引き取りに行くと誰かが言った。
その中でもたったひとりだけ、涙すら流せずに立ち尽くす男がいる。
「おい、藤堂ッ!何をしているッ」
まさに呆然という表現が相応しいのだろう。声を掛けられても、微動だにしなかった。
──伊東先生が死んだ。君には俺が止めるなんて大きいことを言ったのに、何も出来なかった。結局、近藤さんを暗殺する計画は最後まで俺は知らされなかった。
藤堂は室内にいる同志へ視線を向ける。気付けば、近くに居た服部武雄の袖を掴んでいた。
「…………ねえ、服部さん。新撰組局長の暗殺計画って知っていた?」
突拍子もないその質問に、服部は鬱陶しがる素振りを見せながら「当たり前だ」と言う。
このうちのどれくらいの者たちがそれを知っていたのだろう。はたまた、知らなかったのは自分だけなのかと乾いた笑みを漏らした。同時に、まるで己の心が冬の海のように荒れ狂い、冷たくなっていくのを感じる。
──近藤さんを暗殺するなんて馬鹿げたことを考えた時から、伊東先生の命運は決まっていたものだ。今宵の宴へ招かれたのも、
「そうか……。総司、よくやってくれた……。鈴木君を助け、その上で伊東さんを討ち取ったそうじゃないか」
その言葉に、沖田は布団の中で拳を握った。無我夢中だったが、確かに伊東を討つことが出来たのだという実感が湧く。まだ剣を振るえることと桜司郎を救えたことへの安堵が胸を占めた。
「……そうだ、桜司郎さんはへ…………」
「彼なら心配要らん。怪我もなく、別室で休んでいるよ」 頭瘡脫髮成因
「そうですか…………。良かった……」
ホッとしたように息を吐いた沖田を見た近藤は、複雑そうに眉を寄せる。いくら病へ冒されようとも、天然理心流を沖田へ継がせたいという気持ちは変わらなかった。だが、既に血を吐いていることから長くはないことも知っている。故に早く所帯を持たせたいという気持ちは未だにあった。
しかし、沖田が桜司郎へ寄せる関心は、男が女を可愛がり守りたいと思うそれと似ているようにも思えていた。同じように、桜司郎が甲斐甲斐しく沖田の世話をしているのも、妻が夫へ尽くす姿にも見えるのだ。
師弟関係という言葉では表せぬほどの絆が二人の間にはある。そのように近藤は察し始めていた。
──俺としたことが。このような時に下世話な想像など良くない。
「と、とにかく、は気にせずに休んでくれ」
それを聞いた沖田は僅かに目を細めた。伊東の暗殺の次は、御陵衛士の掃討だと聞いたことを思い出す。
そして瞼の裏へ、伊東へ着いていくことを『こうなる運命だった』と言った男を浮かべた。
立ち上がろうと片膝を立てた近藤を見上げる。
「…………平助は?平助は、どうなりますか……」
その名を出せば、近藤はぴたりと動きを止めた。
「……手向かい致せば斬らざるを得まいよ。…………しかし、大丈夫だ。総司が危惧することにはならないだろう。何たって、永倉君と原田君の持ち場だ」
「……そうか、あの二人が…………。ふふ……、近藤先生、有難うございます」
局長の立場としては御陵衛士へ肩入れすることは出来ないが、近藤勇としては平助を逃がしてやりたいのだろう。その気持ちを汲んでは沖田ははにかむ。
山口のように隊へ復帰することは叶わずとも、どこかで生きていてくれればそれで良いのだ。生きていればいつかは会えるのだから──
そう思いつつ、隣の部屋へ入っていく近藤の背を見送りながら、重くなる瞼を閉じた。 一方で、伊東の死体は七条油小路の辻へと運ばれ、晒される。大して時も経たずに奉行所へと報告され、そこから月真院へと訃報がもたらされた。
御陵衛士の面々はそれを嘆き、怒り、慟哭する。刀を手に取り、駕籠を用意させて伊東を引き取りに行くと誰かが言った。
その中でもたったひとりだけ、涙すら流せずに立ち尽くす男がいる。
「おい、藤堂ッ!何をしているッ」
まさに呆然という表現が相応しいのだろう。声を掛けられても、微動だにしなかった。
──伊東先生が死んだ。君には俺が止めるなんて大きいことを言ったのに、何も出来なかった。結局、近藤さんを暗殺する計画は最後まで俺は知らされなかった。
藤堂は室内にいる同志へ視線を向ける。気付けば、近くに居た服部武雄の袖を掴んでいた。
「…………ねえ、服部さん。新撰組局長の暗殺計画って知っていた?」
突拍子もないその質問に、服部は鬱陶しがる素振りを見せながら「当たり前だ」と言う。
このうちのどれくらいの者たちがそれを知っていたのだろう。はたまた、知らなかったのは自分だけなのかと乾いた笑みを漏らした。同時に、まるで己の心が冬の海のように荒れ狂い、冷たくなっていくのを感じる。
──近藤さんを暗殺するなんて馬鹿げたことを考えた時から、伊東先生の命運は決まっていたものだ。今宵の宴へ招かれたのも、
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